2010年1月14日

コンセルトヘボウ

オランダといえばアムステルダム、アムステルダムといえばコンセルトヘボウ。日本で有名な海外オケといえばウィーンフィル、ベルリンフィルあたりが二大巨頭ですが、私が一番好きなオケはこのアムステルダム、いやロイヤルコンセルトヘボウなのです。オケはめったに聴きに行かないのに、ここはたっかい高い日本公演も聴きに行きましたもの。

そういうわけで、この旅行にあたって諸々の準備に先駆けて調べたのはコンサートスケジュールでした。おーあるある、ベートーヴェンのVn協奏曲とシベリウスのTweede...2番かな?指揮は客演のテミルカーノフ。オランダでシベリウスというのもなんですが、月末の定期も演目はシベリウスのVn協奏曲ですから、1月のコンセルトヘボウはシベリウス月間なのかもしれません。ちなみに定期のメインはラフマニノフのTweedeだそうで、あーラフ2よりはシベ2の方がいいな。残席わずかでしたが、なんとか2席購入。

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さて、まずは下見、といってもホテルはホールの真裏ですから、出ればそこはコンセルトヘボウ楽屋口です。自転車いっぱい。

20100114a0.jpg(これは翌朝写真)

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日本にもあまた音楽ホールが存在しますが、さすがに格が違いますなあ。夕食をとる店を探していると、近くに楽譜屋を発見。

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せっかくなんだし何か買う楽譜なかったかな...あ、「わが祖国」のスコア、あれは輸入版しかなかったはず。日本で買うよりは安いかも。スコアコーナーを探してみると、2「モルダウ」と6「ブラニーク」がありました。店員さんに値段を聞いてみたところ、モルダウのスコアを店内のあちこちにあった機械にかざして「10ユーロだね」。ああこれはバーコード読み取り機だったのですか。よく分かりませんが、法外な値段ということはないでしょうし、お買い上げ。

お目当てのレストランは満席でしたが、少しはお腹に何か入れておかねば。お得意のスーパーにてハイネケン(ちゃんと5.5%のがありました)を買い、ホテルにて一眠りすることにしました。開演は20時15分ですからね。日本もこれぐらいの開演時間だと平日公演に行ける人が増えるでしょうに。

きっかり1時間後に目を覚まし、さあ行きましょう。まずはチケット引取りです。どうやら引換証と間違えて領収証を持ってきてしまったようですが、なんとか無事にチケット発券完了。ついでに当初行こうと思って買ってしまった月末公演のチケットも引き取り。はて、どうしましょうかね。

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チラシコーナーを覗いていると、たくさんのチラシの中にひときわ輝く冊子が。見れば2009-2011にかけて行われるマーラーチクルスのご案内です。行きたいなあ。

20100114t1.jpg←右が表紙

20100114t3.jpg ←曲ごとにユニーク解説

タダとは思えぬ豪華冊子、全部載せられないのが残念です。これとは別に今日のプログラムも購入しましたが、全てオランダ語。読めんよ!

オーバーを預けて(うっかりチケットを入れたまま渡してしまい、取り返しに行く羽目に)ホールに入ってみると...おぉぉ、段々畑のオーケストラ。私は一階席の最後方なのですが、オケそのものがかなり高い壇上にあるので見えない心配はなさそう。観客の方々は全体的にやはり年配のお金持ちが多いですね。チケット代も安くはないし、日本も似たような感じですが、少し違うのは、ここが何だかちょっとした社交場となっているらしきところでしょうか。席の離れた母と別れて座席に着きました。

時間になりました。拍手の先を見ると、階段を降りてくる指揮者とヴァイオリニストの姿が。うぉーカッコ良い~!(でも高齢指揮者には厳しいホールです)

〇ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団コンサート
指揮:Yuri Termirkanov

・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
Vn独奏:Vadim Repin
・シベリウス:交響曲第2番ニ長調

ベートーヴェンはCDを買って予習はしたんですが、あまり派手さがないわりに粗は目立ちやすいという古典の典型のような曲なんですよね。聞かせどころの少ないこの曲を選ぶところが凄いっちゃ凄いんですが、1楽章出だしのオーボエのまあウマいこと。そしてファゴットにこんな音が出るとはね。まるでホルンかと思いましたで。ただ吹くだけの楽器やないのね。「われもわれも」とがなりたてるわけでもなく、管楽器のセクションバランスがものすごくいいです。あと目に付いたのはコントラバスの異様なまでのカッコよさ。ホール効果もあるのかもしれませんが、凄い響きです。皆さんでかくてフレンチボウなので、まるでチェロを弾いているかのようでした。こんなに段差がついていると、弾く姿が良く見えて面白い。

ヴァイオリンのレーピンさんは3度の上昇下降形が少々不安なピッチだったかな。これを完璧にこなすのは至難の業でしょうが、1楽章終了後ちょっと観客がざわついたのは、そのあたりだったのかどうか。音は高音がきれいでしたねえ。ちなみに3楽章カデンツァはクライスラーのオール重音バージョン。これを練習し過ぎてほかの箇所をあんまりさらわなかったんじゃないかと疑うほどに、むちゃくちゃうまかったです。音も外さず、感動ほろり。つくづくヴァイオリンって難しい楽器よなあ。

休憩中、ドリンクバーを覗いたのち、母の席を観に行くと、なにやら両隣のご婦人方に話し掛けられたそうで、適当な返事をしつつ楽しんでいる模様です。やれやれ。

さてさて、メインのシベリウスです。オケの人数もぐっと増えました。

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いきなり冒頭の5音でハッとさせられまくり、つかみバッチリ。音が前に流れてます。ああ、指揮者の先生方がよく仰る「ベクトルのついた音」ってこういうことなのかと生まれて初めて実感。出た音というものは絶対に止まらず、後には帰らないのだ―と。

さきほどの管楽器はもちろんですが、弦楽器もまとまりようが凄いです。ヴァイオリンが上手いのは名門オケの必須条件で、もちろんここも例外なく素晴らしかったのですが(日本人もいらっしゃいました)、それだけじゃない、一介の弦楽器奏者に至るまで、全員の音に対する想像力、創造力そして責任感がケタ違いなんです。それだけオケにも自分にもプライドを持っておられるのでしょうし、その集合体だからこそオケとしての共通認識もしっかり築けるのだろうと感じました。

2楽章ではピチカートだけでこんなに音楽を、メロディーを語れるのかと驚愕。ピチカートに対する認識を改めました。こないだブラームスの1番をやった時、師匠にピチカートを物凄く注意された意味がまたここで分かりました(遅いよ)。もっと真剣に練習せなあかんね!しかしまあこんな良い音のピチカートがこれまた弦楽器全体でタイミング揃うって、一体どんな合わせ方してはるんやろか?

そしてここでも再びコントラバス、凄い迫力です。これぐらい上手かったら「チェロはコントラバスの上に乗っかる感じで」といつも言われる言葉も心底納得ですし、そう弾いてやってもいいです。つーか、チェロ要らんのちゃうかとさえ思ってしまいましたわ。ここのオケ、チェロも普通に上手いのに、他のパートがウマすぎる特A+++クラスなので、特Aクラスレベルではまるで下のようにさえ見えてしまいますね...かわいそうに(超余計なお世話)。しかし、弦楽器全員があの早いパッセージを完璧に弾き、そして合わせることって可能なんですねえ。わたしゃシベリウスの細かいパッセージなんて誤魔化すこと以外考えたことなかったですよ。低レベル感想でごめんなさい。

3楽章から4楽章にかけては、盛り上がりとダイナミクスのつけ方が面白かったです。曲全体の構成がしっかり頭に入ってて、なおかつ常に先を意識してないと無理だろうなと思わせる指揮と演奏でした。何度目かのテーマでとうとうクライマックスに達しても、弦の音が汚くなったり金管の音がへたったり割れたりなんかしないのです。ああ美しや。当たり前だと言われそうですが、プロオケでもシベ2の4楽章で金管が潰れるのは珍しくないですもん。技術だけじゃなく、気力も体力もないとつとまりません。

終演後はスタンディングオベーション。これは恒例のようですが、このメンバーでこの演奏だと、奏者ごとに一々挨拶する長々しいカーテンコールなどまるで不要です。全員がソロの自覚持って演奏してるんですから。実際、オケ全体に対する拍手が2,3回続いてあっさりとコンサートは終わりました。アンコールももちろん無し。いいねえ、理想です。

はたしてこれがシベリウス演奏としてふさわしいものだったのかどうかは分かりませんが、コンセルトヘボウサウンドは存分に味わってきた...と思います。

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そうそう、手元の余りチケットは母の発案により、母の隣席ご婦人'sに差し上げました。恐縮されながらも大そう喜ばれましたよ。別れ際には「Enjoy your journy!」と。そして終演後も結局レストランには入ることが出来ずでした。やっぱり予約しとかなきゃダメですね。まぁ明日からはベルギーなんだし・・・とはいえ痩せますわー。ビール飲んでちゃムリかもしれませんが。

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